遺族

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被害者遺族のことを考えたら当然だ。

死刑反対に対してこうした反論が返ってくることがよくありますが、これは死刑に賛成する十分な論拠になっていないように感じます。

刑事裁判は遺族の仇討ちを代行するものではありません。
結果的にそうした効果があることは否定できないとしても、遺族を満足させるために刑を科しているのではありません。
犯罪者は社会に対して損害を与えたその行為によって裁かれているのです。
法によって被告に死刑を宣告するということは、主権者たる国民によって死刑を宣告するということです。社会の成員たる我々が死刑を科しているのです。
遺族のためというお題目でそれを誤魔化すことはできません。

遺族の意向を裁判に反映しようとすると、遺族が死刑を望むか否かで量刑が変わってきてしまいます。同じ犯罪行為に対しては同等の刑が科されるべきであり、法の下の平等という原則に反しています。
裁判を遺族の意思に委ねてしまっては、事件の個々の事情を考慮する余地がありません。
被告には公正な裁判を受ける権利があります。
遺族の意見はあくまで副次的な要素として考慮すべきです。

裁判という限られた期間のなかで全てを解決することはできません。遺族の悲しみは裁判の後もずっと続くでしょう。
法や刑罰によって、悲しみや憎しみを癒すことができるでしょうか?
精神的なケアなどを含めた長期的な支援制度の充実を図るなど、法廷外で取り組むべき問題ではないでしょうか?